気候変動にかかるリスクには、低炭素社会への転換に向けた政策や市場環境の変化にかかる「移行リスク」と、気温上昇の影響や自然災害の激甚化などの「物理的リスク」があります。他方で、こうした外部環境の変化は新たな需要の創出や技術革新などの「機会」も生み出すと考えられます。
JA共済連では、短期(2030年まで)、中期(2050年まで)、長期(2050年以降)の時間軸で気候変動にかかるリスクと機会について、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が公表している1.5℃シナリオ、および4℃シナリオを前提に評価しています。認識した気候変動リスクおよび機会を踏まえて、GHG排出の削減などの対応に取り組んでいます。
また、気温上昇や異常気象の激甚化は、組合員・利用者である農業者の事業や地域社会に影響を与える可能性があります。気候変動の動向やその影響については不確実性が高いとされていますが、外部の研究などを参考に、引き続き、JA共済連の事業基盤である農業や地域社会への影響についても慎重に見ていく必要があると考えています。
リスクと機会 |
想定シナリオ |
発生する事象 |
事業活動への影響 |
時間軸 |
物理的 リスク |
急性※ |
4℃ |
気温上昇に伴い台風が大型化し洪水等の被害が激甚化するなど極端な気象事象が増加する |
建物分野の共済金支払が拡大する |
中長期 |
移行 リスク |
評判※ |
1.5℃ |
低炭素志向の世の中に移行が進み、脱炭素対応に対する関心が高まる |
組織内の気候変動への対応や開示が不十分であった場合、レピュテーションが毀損する |
短期 |
機会 |
レジリ エンス※ |
4℃ |
気温上昇に伴い台風が大型化し洪水等の被害が激甚化するなど極端な気象事象が増加する |
極端な気象事象に備える仕組みの開発・提供の必要性が高まる |
中長期 |
リスクと機会の整理にあたり、IPCCが公表している1.5℃シナリオ、および4℃シナリオを前提に、定性評価を実施しました。今後は、特に重要と考えるリスクについて定量的に分析してまいります。
JA共済連では、2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、事業活動から排出される温室効果ガス(GHG)の削減に取り組んでいます。
<省エネルギー、再生可能エネルギー使用にかかる取り組み>
JA共済連の各施設において、照明や空調によるエネルギー使用の削減やペーパーレス化などによる紙の使用量削減を行っています。また、省エネ設備の導入や再生可能エネルギー化されている電力の使用の拡大にも順次取り組んでまいります。
JA共済連では、自らのGHG排出削減に取り組む(「指標と目標」項目を参照)とともに、機関投資家としても脱炭素社会の実現に向けた取り組みを行っています。
資金運用を通じて気候変動への対応などSDGsの達成に貢献するため、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の要素を考慮したESG投資に取り組んでおり、具体的には下記の対応を行っています。
①投資分析と投資プロセスへのESG課題の組込み(ESGインテグレーション)
投資判断において、企業分析や銘柄分析にESG要素(非財務情報)の評価を組み込んでいます。
②ESG課題に対する投資先との対話(エンゲージメント)
投資先におけるESG課題などについて、持続的な成長と企業価値向上を促すことを目的に、投資先との対話を進めています。運用ポートフォリオのGHG排出に関しては、投資先に排出削減を促すことを通じて、脱炭素化に取り組んでいます。
③SDGsの課題解決を目的とした投資(テーマ型投資)
気候変動テーマ型投資など、SDGs達成への貢献が出来る資産への投資を進めています。
④ネガティブ・スクリーニング
運用資産において、特定の業種・企業などを投資対象から除外しており、気候変動への影響が懸念される石炭火力発電へのプロジェクトファイナンス(脱炭素化に向けた移行に資すると判断した案件は除く)を行わない方針としています。
今後もESG投資を通じた脱炭素社会の実現に取り組んでまいります。